クロガネモチ(黒金餅、学名:Ilex rotunda)とは、モチノキ科モチノキ属の常緑中高木。別名、フクラシバ、フクラモチともよばれる。中国名は、鐵冬青。和名クロガネモチは、モチノキの仲間で、若い枝や葉柄が黒ずんでいることから名づけられた。

分布と生育環境

日本の本州(茨城県・福井県以西)・四国・九州・琉球列島に産し、日本国外では台湾・中国・インドシナまで分布する。暖地から亜熱帯のやや気温の高い地域の山野に生え、日なたから半日陰地を好み、やや日陰地にも耐える。

低地の森林に多く、しばしば海岸林にも顔を出す。

形態・生態

常緑広葉樹。中高木に分類されるものの、自然状態での成長は普通10メートル (m) 程度にとどまり、あまり高くならない。生長の速さは遅い。株は1本立ちで、ふっくらした樹形になる。樹皮は緑がかった灰白色や灰褐色で、ほぼ滑らかで、多数の小さい皮目がある。若い茎には陵があり、紫っぽく色づくことが多い。一年枝は褐色を帯びる。春4月に新芽を吹き、葉が交替する。

葉は互生し、深緑色のなめらかな革質で表面は光沢があり、裏面は淡緑色。葉身は長さ5 - 8センチメートル (cm) の楕円形 - 広楕円形で、先端は尖りやや波打つことが多く、葉縁は全縁。

花期は5 - 6月で雌雄異株。当年枝の葉腋から花序をつくって、淡紫色や白色の小さな4 - 6弁花を咲かせる。

果実は核果で、直径5 - 6ミリメートル (mm) ほどの球形をしており、秋に多くの実が集まってつく。雌雄異株のため雌株だけ果実がつき、11 - 2月に真っ赤に熟して春まで枝に残る。果実はモチノキに似るが、より小さい。

冬芽は葉のつけ根につき、側芽、頂芽とも小さい。

利用

しばしば庭木として用いられ、比較的都市環境にも耐えることから、公園樹、あるいは街路樹として植えられる。実の赤さはモチノキよりも際立って見える。樹勢が強いことから、生け垣にも仕立てやすい。「クロガネモチ」が「金持ち」に通じるから縁起木として庭木として好まれる地域もある。西日本では野鳥が種を運び、庭等に野生えすることがある。

日本では関東から沖縄までの地域が植栽可能で、植栽適期は4 - 5月中旬、6月中旬 - 7月、9月中旬 - 下旬とされる。土壌は壌土にし、根は深く張る。剪定は6月 - 9月、施肥は1 - 2月に行う。

材木は農機具の柄としても用いられる。

地方公共団体の木

  • 関東地方
    • 神奈川県横浜市港南区
  • 中部地方
    • 愛知県名古屋市熱田区、瀬戸市、江南市、大府市
    • 三重県川越町
  • 近畿地方
    • 兵庫県福崎町
    • 和歌山県御坊市
  • 中国地方
    • 岡山県岡山市 岡山ではアクラとも呼ばれ、通りの名前にもなっている。
    • 広島県大竹市
    • 山口県山陽小野田市、田布施町
  • 四国地方
    • 香川県三木町
  • 九州地方
    • 福岡県福岡市、久留米市、中間市、大野城市、古賀市、粕屋町
    • 熊本県長洲町
    • 大分県中津市
    • 宮崎県延岡市
    • 鹿児島県薩摩川内市、霧島市
  • 廃止市町村
    • 広島県因島市

脚注

参考文献

  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、41頁。ISBN 978-4-416-61438-9。 
  • 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、117 - 120頁。ISBN 4-12-101834-6。 
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、132頁。ISBN 4-522-21557-6。 
  • 正木覚『ナチュラルガーデン樹木図鑑』講談社、2012年4月26日、55頁。ISBN 978-4-06-217528-9。 
  • 山﨑誠子『植栽大図鑑[改訂版]』エクスナレッジ、2019年6月7日、46 - 47頁。ISBN 978-4-7678-2625-7。 
  • 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑・木本編I』保育社〈保育社の原色図鑑 49〉、1971年11月。 

関連項目

  • ソヨゴ
  • モチノキ

クロガネモチ arty822 Flickr

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