アイソーン(古希: Αἴσων, Aisōn, ラテン語: Aeson)は、ギリシア神話の登場人物である。長母音を省略してアイソンとも表記される。
クレーテウスとテューローの子。妻はアウトリュコスの娘ポリュメーレー、ポリュメーデー、あるいはピュラケーの王ピュラコスの娘アルキメデー。またアムピノメーとする説もある。英雄イアーソーンとプロマコスの父。
神話
アイソーンはもともとイオールコスの王だったが、異父兄弟のペリアースに王座を簒奪され亡命した。しかしペリアースは男子に恵まれなかったため、アイソーンとその息子イアーソーンに王権を奪われることを危惧していた。あるいは王権に暗い影を落とすと予言された男がアイソーンの息子イアーソーンだと気づいた。そのためペリアースはイアーソーンにコルキスに金羊毛を取りに行くことを命じた。
アポロドーロスによると、ペリアースはイアーソーンがコルキスを目指して出発したのち、しばらくしてアイソーンを殺そうとした。アイソーンはペリアースに妻とともに自ら命を絶つことを願い出た。アイソーンは供儀の最中に牡牛の血を飲んで死に、ポリュメーデーはペリアースを呪いながら首を吊って死んだ。残されたプロマコスはペリアースによって殺されたという。シケリアのディオドーロスもほぼ同じ物語を語っている。
ロドスのアポローニオスはイアーソーンが出発したときアイソーンはすでに死去していたとする。
対して『変身物語』においてオウィディウスは年老いたアイソーンは息子が帰還するまで生き延びたのち、メーデイアの魔法で若返ったと語っている。メーデイアはヘカテーの助力を得て、青春の女神ヘーベーの力を引き出して、アイソーンを40歳以上も若返らせることに成功した。
系図
脚注
参考文献
- アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫(1953年)
- オウィディウス『変身物語(上)』中村善也訳、岩波文庫(1981年)
- パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍溪書舎(1991年)
- ディオドロス『神代地誌』飯尾都人訳、龍溪書舎(1999年)
- ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫(2005年)
- 『ヘシオドス 全作品』中務哲郎訳、京都大学学術出版会(2013年)
- 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店(1960年)
- ピエール・グリマル『ギリシア神話』高津春繁訳、白水社(1992年)



