燧岳(ひうちだけ)は、本州の下北半島北部にある火山である。標高781メートル。山頂は青森県のむつ市にあるが、山体はむつ市と風間浦村にまたがる。

矢筈山、黒森山などの側火山を合わせた火山としては、むつ燧岳火山(むつひうちだけかざん)という。本州最北端の火山で、第四紀の火山フロントの一角をなす。

位置と地形

下北半島の恐山山地の東側には二つの火山がある。大畑川をはさんで南が恐山、北がむつ燧岳である。むつ燧岳の西は易国間川で区切られる。北は津軽海峡で山が海岸に迫る。東は田名部平野に接する。

火砕流噴出物由来のなだらかな山容をなし、最高点の燧岳 (781m) から北に篠原岳 (718m)と矢筈山 (626.7m)が、南西に大石八森 (574m) が連なる。燧岳の南に佐藤ヶ平という台地状の緩斜面が広がる。山の東面は大きく崩れており、大赤川と小赤川が谷を刻む浸食カルデラである。小赤川の南に孤立して黒森山 (480m) がある。溶岩は以上の山の頂上付近に限られる。

山の南の大畑川沿いに薬研温泉がある。大赤川にも温泉が出ている。

むつ燧岳火山の活動

燧岳の基盤岩は、新第三紀の火山岩・堆積岩からなる。その一つである大畑層は、約3000万年前の火砕流堆積層である。

第四紀には、まず矢筈山(626.7メートル)から噴出した旧期火山体が作られた。その上に、燧岳を中心に3度にわたって噴出した新期火山体が積み重なった。新期と旧期は浸食の度合いによって区別される。旧期の火山には深い谷が刻まれており、新期火山は未だ浸食が進まずなだらかな地形になっている。

新期の噴出物は、南から東へ海岸の大畑(おおはた)まで幅広く広がり、北西にも海岸の易国間(いこくま)まで細長く伸びる。これは1から3期に分けられ、1と2は山体を広く覆う火砕流、3は山頂付近の溶岩を作った。

新期第1期の噴火は、燧岳の東にカルデラを作った。これを東に開いて浸食を進めたのが、大赤川・小赤川である。

第2期では、約80万年前に燧岳の南で佐藤平火砕流を起こした。その後に、高橋川火砕流が約77万年前にかぶさった。また、北西に易国間火砕流が流れ出た。

第3期には火砕流がなく、約60万年前に出た溶岩が今の燧山山頂を形成した。約50万年前に溶岩が黒森山を作り、これが最新の火山活動となった。

歴史時代に噴火の記録はない。

脚注

参考文献

  • 井岡聖一郎・鈴木陽大・若狭幸・村岡洋文 (2021)「青森県陸奥燧岳大赤川、小赤川流域における降水、湧水、河川、温泉のBr/Cl比」、『水文・水資源学会研究発表会要旨集 』34巻。
  • 梅田浩司 (1992)「下北半島、むつ燧岳火山の地質と岩石記載」、『岩鉱』87巻10号、1992年。
  • 梅田浩司・檀原徹 (2008) 「フィッション・トラック年代によるむつ燧岳の活動年代の再検討」、『岩石鉱物科学』37巻5号。
  • 小池一之・田村俊和・鎮西清高・宮城豊彦編『日本の地形』3(東北)、東京大学出版会、2005年。
  • 富山眞吾・梅田浩司・花室孝広・高島勲・林信太郎・根岸義光・増留由起子 (2007)「下北半島、むつ燧岳火山地域の変質帯と変質岩の熱ルミネッセンス年代」、『岩石鉱物科学』36巻4号、2007年。

外部リンク

  • 国土地理院「地理院地図」。2022年2月閲覧。
  • 産業技術総合研究所「日本の火山」データベースにある「陸奥燧岳 Mutsu Hiuchi Dake」、2022年2月閲覧。

燧ヶ岳 山の風景図鑑

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