ハエ亜目(短角亜目、Brachycera)は、ハエ目(双翅目)に属する分類群の一つ。いわゆるハエ、アブを含む大きなグループである。
概要
ハエ亜目は世界中に分布する分類群で、現生種だけで約95科約80000種が記録されている。約200万年以上前に分岐して発生した分類群と考えられており、現生で非常に繁栄しているグループの一つである。ハエ亜目に属する種は形態的、生態的に非常に多様で、同じ双翅目に属するカ亜目よりはるかに多様度が高い。
ハエ亜目の学名 Brachycera は、ギリシャ語で「短い角」(short-horned)を意味し、双翅目の中でも触角が短いことを示している。
形態
触角は通常3節以下で構成され、最も先端の節には触角刺毛か触角筆突起を生じる。小顎鬚(maxillary pulps)は、カ亜目では通常3小節以上に分節するが、ハエ亜目の種はふつう2小節以下に分節する。
幼虫は蛆型で、脚はない。通常体節は12節以下で、体節が13節以上あるカ亜目の幼虫とは区別できる。気門は9対。
分類
ハエ亜目の単型性は、分子系統学的なデータや、形態的な特徴によって支持されている。
伝統的な下位分類群として、直縫短角群(Orthorrhaphous、ハエ下目(環縫短角群)を除く下目を含む)、無額嚢節 Aschiza、額嚢節 Schizophora (ともにハエ下目内の分類群)などの群や節を設けることもあるが、これらは側系統群であると考えられている。
下位分類
- ムシヒキアブ下目 Asilomorpha - オドリバエ上科、ムシヒキアブ上科など。単型ではないためハエ下目に含めるとする研究もある。
- ハエ下目 Muscomorpha - ヒツジバエ上科、ハナアブ上科など多数。
- ミズアブ下目 Stratiomyomorpha - ミズアブ科など。
- アブ下目 Tabanomorpha - アブ科など。
- キアブ下目 Xylophagomorpha - キアブ科など。
脚注
参考文献
- David Grimaldi, Michael S. Engel (2005) Evolution of the Insects (Cambridge Evolution Series). Cambridge University Press ISBN 978-0521821490
- 川合禎次、谷田一三(共編)『日本産水生昆虫―科・属・種への検索』(2005年、東海大学出版会)
- 三枝豊平 (2008)「ハエ目(双翅目)DIPTERA 概説」In, 平嶋義宏 森本桂 (監修)『新訂 原色昆虫大圖鑑』 Vol.III, 北隆館:東京, pp. 255-283. ISBN 978-4-8326-0827-6
- 素木得一 (1969)『幼虫の検索』北隆館.




